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イベント・キャンペーン 補助犬法20周年キャンペーン 補助犬利用者 インタビュー 介助犬ユーザー 安杖さん 2/4

自分の意思で身体が動かせることへのありがたさ

「まったく動けないわけではありません。まだ体の3分の1は動かすことができるのですよ。それだけでも大変ありがたい、と思っています」

健常者から、自分の身体が3分の2近くも動かなくなってしまう、という事態は一般的に信じがたい、受け入れられがたい出来事だろうと誰しも思うはずです。それでも安杖さんは「ありがたい」と表現します。

なぜ?

「実は、それ以上にとてもつらい思いを経験しているんです」

身体の3分の2が動かなくなることより辛いもの。

人工呼吸器を外すリハビリテーションでした。

安杖さんは、背骨を骨折しただけではなく、両方の肺に肋骨が数本突き刺さるという甚大な傷を負いました。穴が空いたところからは多量の出血と、呼吸困難。この傷こそが安杖さんの生命を脅かす危険なものでした。肺に穴が開いていることから自力での呼吸は当然できません。すぐに人工呼吸器が取り付けられました。

人工呼吸器が取り付けられたということは、いつかそれを外さなくてはなりません。そのタイミングが背骨を修復する手術でした。

手術を受けるためには、自力で肺呼吸できることが大前提だったのです。

 背骨を修復しないと、完全に寝たきりとなってしまいます。そこで、手術に向けて自力で肺呼吸ができるように、人工呼吸器から酸素が少しずつ抜かれるリハビリが始まりました。

これが「とにかくつらかった」と、安杖さんは語ります。

少しずつとはいえ呼吸ができない悶絶の苦しみが毎日襲います。このリハビリは3ヶ月ほどかけてゆっくりとしたペースでおこなう場合もあるそうですが、それでもその苦しさに耐えられず、人工呼吸器の取り外しを諦める人もたくさんいるといいます。

安杖さんは3週間で外れました。

「精神力が強いとか、そういうのではないんですよ。これはもう強制でした」

人工呼吸器を取り外すとき、安杖さんは意識があれども身体を動かすことがまったくできない、半ば植物状態だったのです。

「だから、呼吸が苦しくても、その意思表示をすることができなかったんです」

「苦しい!」

「もうやめます!」

呼吸ができない悶絶の苦しみを味わいながらも、その意思表示のリアクションがまったくできません。酸素を抜かれるたびに感じていた安杖さんの悶絶の苦しさを、誰も気がつくことなくそのままリハビリが続けられました。だから3週間で外せることができたのです。

「もう地獄の苦しみとしか言いようがないですね。呼吸ができない苦しみ、その苦しみを訴えようにも身体を一切動かすことすらできない。このときの苦しみに比べたら、身体の3分の2が動かないなんて、たかが知れている、と思いました」

呼吸ができる、ありがたさ。

身体を動かせる、ありがたさ。

身体が3部の2も動かせられない、ではない。

まだ「3分の1も身体が動かせる」のだ。

「この苦しみがあったからこそ、自分の境遇を受け入れることができました。健常者ほどはないにしても、車椅子や器具を使えば『何でもできる』と思えるようになりました」

いまの状態は、決してどん底などではない。まだまだやれることはあるし、できることだっていっぱいあるはず。

こうしていま、安杖さんは介助犬とともに、一人で普通に暮らしています。

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